韓国・ソウルのクリニックの価格表を見て、「エラボトックス」が3行に分かれていて、値段だけが違う——という経験をされた方は多いと思います。部位も注入量(単位)も同じなのに価格が3倍近く違う。この差の正体は、施術の内容ではなく使用するボツリヌストキシン製剤(製品ブランド)の違いであることがほとんどです。多くのクリニックが、①海外製の先発品、②海外製のその他の製品、③韓国国内製造品、というおおまかな3階層でメニューを組んでいます。ここでは、その3つが表のどこで見分けられるのか、価格差は実際どのくらいなのか、そして「高いほうが効く」と単純に言えない理由を、順番に整理します。
なお、この記事では特定の製剤が他より優れている/劣っているという判断はしません。どれが適しているかは、部位・筋肉の厚み・これまでの施術歴・次に韓国へ来られる時期などによって変わる医療的な判断で、カウンセリングの場で決まるものだからです。
なぜ同じ部位で価格が3つに分かれるのか

ボツリヌストキシン製剤は、複数のメーカーがそれぞれ別の製品として製造しています。日本でも名前が知られているものでは、アラガン社の製品(いわゆる「ボトックス®」の名称はこのメーカーの商標です)、メルツ社のゼオミン、イプセン社のディスポートなどがあります。これに加えて、韓国国内のメーカーが製造する製剤が複数あり、韓国のクリニックではこれらが日常的に使われています。
クリニック側から見ると、仕入れ価格が製剤ごとに大きく異なります。輸入品は輸送・保管・輸入手続きのコストが乗りますし、先発品は開発費の回収分も価格に含まれます。この仕入れ差がそのまま施術メニューの価格差として表に出ている、というのが「同じ部位なのに3行ある」いちばん素直な説明です。
つまり、価格が安い行を選んでも、注入する部位が狭くなるわけでも、診察が簡略化されるわけでもありません。変わるのは使う製剤です。もし価格差の理由として製剤名以外の説明(診察の有無、注入本数、担当者など)が出てきた場合は、それは別の要因なので、必ず内訳を確認してください。
メニュー上でティアを見分ける方法
韓国のクリニックの価格表では、施術名のうしろにカッコ書きで製剤名が入っているのが一般的です。具体的には次のような書き分けになります。
| 表記の例 | 意味するもの |
|---|---|
| (アラガンオリジナル) | 海外製の先発品を使用する行 |
| (ゼオミン、ディスポート) | 海外製の別メーカー製品を使用する行。多くの表でこの2つは同価格帯にまとめられています |
| (韓国製)/(韓国製プレミアム) | 韓国国内メーカーの製剤を使用する行 |
ここで見落としやすいのが、同じクリニックの表の中で「韓国製」と「韓国製プレミアム」という2つの表記が併存していることがある点です。たとえばMIO Clinicの公開メニューでは、しわボトックスの行は「韓国製プレミアム」、エラ・側頭筋・スキンボトックス・Vライン・口角などの行は「韓国製」と書き分けられています。この2つが同じ製剤を指しているのか別なのかは表からは読み取れませんので、韓国国内製を選ぶ場合は「この行はどの製剤ですか」と一度聞いておくのが確実です。
製剤名が表にまったく書かれておらず、価格だけ3段階に並んでいる表もあります。その場合も、聞けば答えてもらえる情報です。聞きにくい質問ではありませんので、遠慮なく確認してください。
実際の価格差はどのくらいか
具体的な数字で見たほうが早いので、MIO Clinicが執筆時点で公開している価格を例に挙げます。いずれも付加価値税(VAT)は別途で、円換算は1,000ウォン=約105円で計算した概算です。為替は日々動きますので、決済時のレートでご確認ください。
しわボトックス(額・眉間・目尻などの部位単位)
| 部位数 | アラガンオリジナル | ゼオミン/ディスポート | 韓国製プレミアム |
|---|---|---|---|
| 1部位 | 79,000ウォン(約8,300円) | 45,000ウォン(約4,700円) | 15,000ウォン(約1,600円/通常29,000ウォン) |
| 3部位 | 189,000ウォン(約19,800円) | 139,000ウォン(約14,600円) | 39,000ウォン(約4,100円/通常79,000ウォン) |
| 5部位 | 279,000ウォン(約29,300円) | 199,000ウォン(約20,900円) | 59,000ウォン(約6,200円/通常119,000ウォン) |
エラ・唾液腺・側頭筋ボトックス(各50単位)
| 製剤 | 価格 |
|---|---|
| アラガンオリジナル | 165,000ウォン(約17,300円) |
| ゼオミン/ディスポート | 109,000ウォン(約11,400円) |
| 韓国製 | 35,000ウォン(約3,700円/通常41,000ウォン) |
スキンボトックス 2cc
| 製剤 | 価格 |
|---|---|
| アラガンオリジナル | 159,000ウォン(約16,700円) |
| ゼオミン/ディスポート | 129,000ウォン(約13,500円) |
| 韓国製 | 79,000ウォン(約8,300円/通常99,000ウォン) |
同じ「エラ50単位」でも、いちばん上の行といちばん下の行では4倍以上の開きがあります。額・眉間・目尻をまとめて入れる5部位でも同様です。この差は施術の丁寧さの差ではなく、製剤の差である——という前提で表を読むと、判断がしやすくなります。
なお、担当医師を指名する場合は別途100,000ウォン(約10,500円)が加算されます。また、上の価格はVAT別ですので、最終的な支払額はここに税額が乗ります。単位の数え方や表に出てこない追加費用の読み方は、韓国・ソウルのクリニックの価格表はどう読む?で詳しく整理していますので、初めて韓国で施術を受ける方はあわせてご覧ください。
「高いほうが効く」と言い切れない理由
ここがいちばん誤解されやすいところです。価格が高い=効果が強い、という単純な対応関係にはなっていません。理由は3つあります。
1つ目に、効き方を左右する要素が製剤だけではないからです。 同じ部位でも、筋肉の厚み、投与する単位数、注入する層と位置、左右のバランスの取り方によって仕上がりは変わります。製剤の選択はその要素のひとつにすぎません。
2つ目に、製剤ごとに「単位(u)」の数え方が同一とは限らないからです。 一般論として、ボツリヌストキシン製剤の単位表示はメーカー間で直接換算できるものではなく、製品ごとに投与量の考え方が異なります。したがって「50単位」という数字だけを製剤をまたいで比べても、同じ量を比べたことにはなりません。前回とは違うティアを選ぶときは、「前回と同じ効き方を狙うなら、この製剤では何単位になりますか」と聞くのが実務的です。
3つ目に、個人差が大きいからです。 効果の立ち上がりの早さ、持続期間、必要な単位数には、どの製剤でも個人差があります。持続期間について「必ず◯か月もちます」と断言できる製剤はありません。
逆に言えば、安い行を選んだから雑な施術になる、ということもありません。価格表の3行は、同じ診察・同じ手技のもとで製剤だけが違う、という設計になっているのが通常です。
ティアより先に決めるべきこと
実際のカウンセリングでは、ティア選びは最後です。先に決まるのは次の順番だと考えてください。
- そもそもボツリヌストキシン注射が適した悩みなのか。たとえばフェイスラインのもたつきが「筋肉の張り」なのか「皮膚・脂肪のたるみ」なのかで、選ぶ施術自体が変わります。後者であれば注射ではなく別のアプローチが検討されます。
- どの部位に、何単位入れるか。ここが決まって初めて、製剤ごとの見積もりが出せます。
- そのうえで、どの製剤にするか。
MIO Clinicは、まず肌・顔の状態を確認したうえで量を決める、控えめな方向から始める考え方を取っています。「効きを強くしたいから高いほうを」という選び方ではなく、必要な量を先に決めてから製剤を選ぶ、という順番のほうが結果的に納得しやすいと思います。
カウンセリングで聞いておきたいこと
日本語でも英語でも、次の5つを聞けば判断に必要な情報はそろいます。メモにして見せるだけでも通じます。
- 「この3つの行の違いは製剤だけですか?」(他の差がないかの確認)
- 「それぞれの製剤名を教えてください」(特に「韓国製」「韓国製プレミアム」の中身)
- 「私の場合、この部位に何単位入れる想定ですか?」(部位単位表示の場合は、何部位に該当するか)
- 「表示価格はVAT別ですか。最終的な支払額はいくらですか?」
- 「今日の分の記録(製剤名・単位数・注入部位)を残してもらえますか?」
最後のひとつは特に大切です。次に別の機会に施術を受けるとき、前回の製剤と単位数がわかっていれば、比較や調整が格段にしやすくなります。記録の残し方や帰国後の連絡手段については、帰国後のアフターケアはどうする?にまとめています。
ダウンタイムと、旅程のどこに入れるか
製剤のティアが変わっても、ダウンタイムの考え方は基本的に同じです。部位によって違いますので、そちらで判断してください。
- しわボトックス(額・眉間・目尻など)、エラ・側頭筋、口角:麻酔なしで受けられる部位です。注射痕の赤みや、ごく小さな内出血が出ることがあります。効果は数日から2週間ほどかけて徐々に出るため、旅行の初日に入れておくと、滞在中に変化を確認しやすいという考え方ができます。
- スキンボトックス、首のしわ、広頚筋、多汗症:麻酔を使用する施術です。注入範囲が広く、直後の腫れや赤みが出やすいため、帰国前日など旅程の後半に置くほうが無難とされる部位です。
痛みの程度と麻酔の種類については韓国・ソウルの施術は「どのくらい痛い」のかを、3泊4日などの短い滞在での組み立て方は施術は「初日」と「最終日」どちらに入れるべき?をご参照ください。
施術当日は、注入部位を強くこすったり、長時間下を向いた姿勢を続けたりすることは避けるよう案内されるのが一般的です。具体的な注意事項はクリニックの指示に従ってください。
向いていないケース・注意していただきたいこと
- 妊娠中・授乳中の方:ボツリヌストキシン注射は延期の対象になります。時期を待つ判断が基本です。
- 神経筋疾患の既往がある方、関連するお薬を服用中の方:事前に必ず申告してください。施術自体が見送りになる場合があります。
- 過去にボツリヌストキシン注射でアレルギー反応が出た方:同様に申告が必要です。
- 「たるみ」が主な悩みの方:筋肉の張りが原因でない場合、注射では期待した変化が出ません。この場合は別の選択肢の検討になります。
- 滞在中に結果を見届けたい方:効果の出方には時間がかかります。翌日に劇的な変化が出ることは、生理学的にありません。滞在が2〜3日の場合、仕上がりを確認するのは帰国後になります。
そして、価格だけでティアを決めないことです。安いほうを選ぶこと自体は何も問題ありませんが、「なぜその価格なのか」を説明してもらえないまま決めるのは避けたほうがよいと思います。説明を求めたときに具体的な製剤名が返ってくるかどうかは、そのクリニックの価格表の透明性を測るいちばん簡単な方法でもあります。
よくあるご質問(FAQ)
Q. アラガンオリジナルとゼオミン・ディスポートは何が違うのですか? A. 製造しているメーカーが異なる、別々の製品です。韓国のクリニックの価格表では、輸入コストなどの差から前者が上位の価格帯、後者がその下の価格帯として並ぶことが多くなっています。どちらが優れているかを一般論で決めることはできず、部位・必要量・これまでの施術歴をふまえた医療的な判断になります。
Q. 韓国製を選ぶと効果が短いのですか? A. 価格が安いことと持続期間の長短は、そのまま対応するものではありません。持続期間は製剤だけでなく、注入量、部位、筋肉の状態、そして個人差に左右されます。どの製剤であっても「必ず◯か月もちます」と断言できるものではありませんので、カウンセリングで一般的な目安を確認してください。
Q. 同じ「50単位」なら、どの製剤でも同じ量ということですか? A. いいえ。ボツリヌストキシン製剤の単位表示はメーカー間で単純に換算できるものではありません。ティアを変えるときは、単位数の数字だけを比べるのではなく、「前回と同じ効き方を狙うなら何単位になりますか」と聞くのが確実です。
Q. 表示価格に税金は含まれていますか? A. 韓国のクリニックの価格表は付加価値税(VAT)別で表示されているのが一般的です。MIO Clinicの公開価格も執筆時点でVAT別です。また、担当医師を指名する場合は別途100,000ウォン(約10,500円)が加算されます。最終的な支払額は必ず施術前に確認してください。なお価格は変更されることがありますので、上記はあくまで執筆時点の公開価格です。
Q. 途中で製剤のティアを変えても大丈夫ですか? A. 変えること自体は珍しくありません。その際に重要なのが前回の記録です。前回使用した製剤名と単位数がわかっていれば、今回どのくらいの量にするかの調整がしやすくなります。記録が手元にない場合は、「前回の効き方が強すぎた/弱すぎた」といった体感だけでも伝えてください。
Q. 額と眉間とエラを同時に入れたいのですが、ティアは部位ごとに選べますか? A. メニュー上は部位ごとに行が分かれていますので、組み合わせの相談自体は可能です。ただし総額と総単位数が変わりますので、見積もりは「合計でいくらになるか(VAT込み)」の形で出してもらうことをおすすめします。
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